誠実な店主の人柄が心をつかむ旨くて安い市民酒場【和泉屋】

「自分が客として行きたいと思える店にしたい」そんな気持ちで店を改革してきたのは、三代目店主の秋津清剛さん。「祖父が店を始めたのも今の場所で、当時は目の前に市電の停留所があったので、場所的にも恵まれてたいそう繁盛していたそうです」。

時は流れ、清剛さんが店を継ぐ頃には、黄金町界隈にも飲食店が数えきれないほどあって、生き残るには工夫が必要と考えたのだとか。そこでまず魚介類の仕入れ先を、それまでの町場の魚屋から市場へと変更。毎朝自ら横浜中央市場に出向いて買い付けるようになった。そうすることで新鮮な食材を安く仕入れられるようになり、料理の値段も抑えて質の高いものを出せるようになった。いち推しは3種類の魚を使った刺身3点盛り合わせ。手頃な値段で提供するためには、その日ごとの市場の入荷状況を見極めて安くて旨い魚を選ぶ目が必要だという。

メニューにも工夫を凝らし、割烹的な和の料理だけでなく、ホテルでの修業時代に身に着けた洋食の技を生かしてハンバーグや牛頬肉の煮込み、ステーキ、ピザなどもラインナップに加えた。こちらも客に喜んでほしい一心で本気で取り組んでいて、その甲斐あってハンバーグが食べたくて来るという人もいるほど好評を得ている。「洋食を加えた当初は祖父には小言も言われましたけどね」と笑う。

とはいうものの、この店はもともとサービス精神が旺盛で、客の要望に応えて柔軟なメニュー構成に努めてきた。人気のどじょう料理と並び古くからウリにしてきたのは若鳥のから揚げ。創業当時は客には職人が多く、がっつり食べ応えのある料理を望む声も多かったのだろう。先々代の時代から受け継いでいるという唐揚げは、手羽先から胸肉までつながった大きなかたまり肉を使用し、ボリュームがあってジューシー。絶品と称賛して熱愛するファンも多い。

和泉屋で出すどじょうの鍋は、身を開いて調理した柳川鍋と、包丁を入れずに丸ごと調理したどぜう鍋の2種類。ご主人によると、どじょう初心者にはくせが少なく食べやすい柳川鍋がおすすめとのこと。ちなみに、どじょうはうなぎよりも栄養価が高いともいわれ、ビタミンやミネラルが豊富なスタミナ食品で、疲労回復にも効果があるのだとか。

和泉屋の冬の名物であるふぐ料理は、刺身と鍋とから揚げと、それらの単品に刺身などを併せたコースがある。ふぐの中でも王様と呼ばれる質の高いとらふぐをたっぷり使った鍋が3600円というのは、なかなか良心的な金額でしょう。ふぐの唐揚げも770円と気軽に注文できる料金設定で、初ふぐ体験にもおすすめです。

そしてもうひとつ、この店の人気を支える名脇役であるのが定食。酒を飲まない人にも気軽に来店してもらえるようにと、ランチどきだけでなく夜にも同じ料金で定食を出している。これも和泉屋が代々受け継いできたサービス精神の表れだろう。さっと食事だけして帰るという客も大歓迎。「とにかく客に喜んでもらうことが第一」という店主の気持ちが随所に溢れていて、コロナ以前には2階の広間も使って連日大忙しだったというのも納得できます。

頑張った自分へのご褒美としてふぐ鍋を食べに行くも良し、日常の夕食に定食を食べに行くも良し。店構えは少々高級そうで敷居が高い気もするけれど、入ってしまえば店主の人柄が感じられてカジュアルで居心地のいい店。値段も手頃で、今時のひとり飲み、ひとりめしにもよさそうです。

和泉屋
〒231-0053 横浜市中区初音町3-62
営業時間 11:30-14:00 17:00-22:00 (LO21:30)
定休日:日曜日、第1・第3月曜日
TEL  045-231-4314

※時短営業などの情報は各店にお問い合わせください。






     

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